一本道の帰り道

 

駅から降りて家につくまでの15分間の帰り道は、頭をからっぽにして歩いていくそれだけのための時間だ。

夜の一歩手前の空は、きのうきていたシャツの色に似ていた。

いくつか星が見える、それらの星は、ほんとうに物理的には、手が届くんだよなあなどと考えながら歩く。わたしと星との間にさえぎるものがなにもないのでひかっているのがここからでもみえるのだから、心からのぞめばいいのかもしれないなどと考えている。

一本向こうのマンションの玄関から、ただいまぁという声が聞こえて、お母さんの帰宅を知る。まどのひとつひとつの中に、世界があることを想像する。

近頃かぜがよく吹いたので盛況だった軒先の風鈴は、今日はしずかにしている日なのだとか。

自転車に乗った高校生とすれ違う。すれ違うとき、おたがいすこしずつ相手を見て、すぐにみなかったふりをしてしまう。

ぼうっと歩いていると、ねこにつまづきそうになっていたのに、気づかなかった。とっさにごめんごめんと謝る。ねこはめんどうなものを見るような目つきで向かいのマンホールの上に寝そべった。金属だから多分あったまっている、(おそらく彼の)ベットなんだろう。

家につくと、母がごはんを作って待っている。背中が小さくなっているのをふとみつけて心がきしむけど、それも今はみないふり。妹が予備校を休み続けているらしい。

 

思い通りにならないことばかりだし、うまくいかないことばかりだし、いつも終わったことを後悔するばかりなのはここ3年間かわっていないけど、今はなんとか、これで、少しづつやっていこうと思っている。